このページでは、
経理の仕事の中でも「毎日行う業務」のひとつである
現金実査についてお話しします。
経理というと、
- 仕訳入力
- 会計ソフトの操作
- 決算や申告
といった作業を思い浮かべがちですが、
実務では、まず押さえておきたい大切なことがあります。
それは、
「お金が合っているかを、日々確認すること」です。
現金実査は、
帳簿と実際のお金が合っているかを確認する、
とてもシンプルな作業です。
難しい計算や、特別な知識は必要ありません。
ただ、
この確認をしているかどうかで、
経理の安定感は大きく変わります。
この記事では、
- 現金実査とは何をする作業なのか
- なぜ毎日(または動いたタイミングで)行うのか
- 実務で見てきた具体例
- 現金管理を楽にする考え方
- 現金実査表(テンプレート)の使い方
を、経理初心者の方にも分かるように説明します。
「現金を扱う会社で、
毎日なにを確認すればいいのか分からない」
そんな方は、
まずここから読んでみてください。
現金実査は、経理の姿勢が一番よく表れる仕事
現金実査は、
経理の仕事の中でも地味で、後回しにされがちです。
でも私は、
現金実査を見れば、その会社の経理レベルはだいたい分かる
と思っています。
税理士事務所で最初に教えられたこと
私が税理士事務所で監査担当者になったとき、
先輩に最初に教えられたのは、これでした。
「まず、現金の管理がどうなっているかを確認しろ」
現金管理を見れば、
- 経理がきちんと回っているか
- ルールがあるか
- 管理しようという意識があるか
がおおよそ分かるからです。
家で言えば、
玄関の様子を見れば、
だいたい雰囲気が分かるのと同じです。
現金は「合う・合わない」だけの問題ではない
現金というと、
「残高が合っているか」だけに目が行きがちです。
でも本当に大事なのは、
どう管理しようとしているか。
- 誰でも自由に触れる状態になっていないか
- 使い道は決まっているか
- 記録がきちんと残っているか
現金管理には、
経理に対する姿勢そのものが出ます。
現金実査とは何をする作業か
現金実査とは、
帳簿上の現金残高と、実際にある現金を一致させる確認作業です。
確認するのは、たった2つ。
- 現金出納帳の残高
- 金庫・引き出し・レジにある現金
この2つが合っているかを確認します。
なぜ「毎日」やると意味があるのか
理由はシンプルです。
👉 ズレた日が特定できるから
毎日実査していれば、
- 昨日までは合っていた
- 今日ズレた
がすぐに分かります。
逆に、
1週間・1か月まとめて確認すると、
- いつズレたのか分からない
- 原因を思い出せない
という状態になります。
現金が合わない原因は、ほぼ決まっている
実務で見てきた限り、
現金が合わない原因はだいたい次のどれかです。
- 立替精算の処理漏れ
- 出金したのに仕訳が入っていない
- 入金したのに帳簿に反映されていない
- 使途不明の現金
毎日実査していれば、
原因はその日の行動まで絞れます。
実際にあった話:現金が合わなかった理由
私の経験で、こんなことがありました。
レジのお金が合わない。
毎日チェックしていたため、
「いつからおかしくなったのか」
がすぐに分かりました。
詳しく調べた結果、
従業員が現金を盗んでいたことが分かりました。
これは特別な話ではありません。
毎日現金を確認していること自体が、
犯罪の抑止力にもなります。
また、不正でなく単なるミスでも、
記憶が新しいうちに対応できるため、
解決が早くなります。
現金を扱う頻度で、実査の考え方は変えていい
- 現金を日常的に扱う会社
→ 毎日、現金実査を行う - 現金の入出金がたまにしかない会社
→ 動いたタイミングごとに実査を行う
大事なのは頻度ではなく、
👉 ズレを放置しないことです。
現金を減らすと、経理は一気に楽になる
私が一番いいと思っている現金対策は、
現金をきちんと管理することではありません。
現金そのものを扱わないことです。
経費精算は「まとめて振込」にする
- 従業員の経費精算は、その都度行わない
- 月に1回、または2回まとめて精算
- 現金手渡しはせず、必ず振込で返す
これだけで、
- 小口現金の出入りが激減する
- 現金実査の負担が減る
- ズレの原因がほぼ消える
という効果があります。
ここでは考え方だけを紹介しましたが、
具体的なやり方や運用の工夫については、
別の記事で詳しくお話しします。
現金実査表(テンプレート)を用意しました
現金実査を
迷わず・淡々と続けられるように、
現金実査表(Excel)を用意しました。
使い方は2通りあります
① 印刷して使う
- 金種ごとに枚数を記入
- 合計金額を確認
- 金庫の横などに置いておく
現場でサッと確認したい場合に向いています。
② Excelのまま使う
- 金種ごとの枚数を入力するだけ
- 合計金額は自動計算
- 帳簿残高との差額もすぐ分かる
経理がExcel中心の会社はこちらがおすすめです。
👉 [現金実査表テンプレをダウンロード]
まとめ:現金管理は「経理の玄関」
現金実査は、
- 難しい作業ではない
- 時間もかからない
- でも、やらないと必ず後で困る
仕事です。
現金管理を見れば、
その会社の経理に対する姿勢が見える。
現金がある会社では、
毎日、または動いたタイミングで、
必ず現金実査を行いましょう。
そして可能であれば、
現金を使わない仕組みに寄せていく。
それが、
毎日回る経理をつくる一番の近道です。







